ロクデナシ理論

彼女の視線がどこへ向かうか、オレにはすぐにわかった。
何しろオレと同じものを見ているから、すぐ視界に入る。気が付かないわけがない。

「クイーンは男鹿のどこがいいんですか?」
「えっ!?」
「よく見てるでしょ」
「えぇっ! そんなことないわよ……!」

否定しながら顔が真っ赤。それでわからいでかっつーの。

「いいじゃないですか、別に。どうせ男鹿以外のみんなは知ってますよ」
「そうなの!?」

当たり前だ。こんなわかりやすいフラグをスルーするのは、興味がないという意思表示か、よほどの単細胞か、どちらかだ。哀しいかな、我らが男鹿くんは後者だが。

彼女はうううん、と唸ったあと、照れた顔で笑った。

「男鹿くん、本当は優しい人でしょ?」
「は? そうですか?」

オレは同意しかねた。その言葉を否定したかったというよりも、彼女と同調したくなかった。
無邪気に笑う彼女が急に憎らしくなる。

「どこをどう見たらそうなったんですか」
「やーね。知ってるくせに」

そうだな。確かにそうだ。だが、そんなことは、オレが知っていれば十分だ。
オレだけが知っていれば、それでいいのに。

だから、わかったようなことを言われると、腹が立つ。
お前が男鹿の何を知ってんだ、と。


クイーンならなおさら。
だってオレはクイーンには勝てない。かわいさも、強さも。
そんな強敵を、見逃すわけにはいかないので。


「ロクデナシですよ、男鹿なんて」


だから、とりあえず男鹿を引き摺り下ろしておく。
頼むよ、クイーン、さっさと諦めてよね、という願いを込めて。


end

2010.06.06